2022年のまとめ②~光合成、収量を上げるには~

 前回の記事では今年の環境データを振り返り、光合成と収量の関係を見ました。

  光合成量が増えれば、収量が増えることの関係は見えましたが、環境値(光、温度など)で決まってしまうとも言えます。 

  では収量、光合成量を上げるにはどうしたら良いか考えてみます。 1~3月、4~6月、7~9月、10~11月の温室内の各環境値の日平均値を出し24時間での推移をグラフ化してみました。

 まずは冬季1~3月のグラフです。 


 1~3月は前回記事で紹介したグラフで示したように年間でも光合成量が多い月です。その要因として二酸化炭素施用の効果が挙げられます。光合成には光が必要なので、基本的に純光合成速度(緑グラフ)は日射(オレンジグラフ)と同じような形になります。ここで注目して欲しいところは矢印の位置でグラフが高くなっている点です。これは二酸化炭素施用の効果です。二酸化炭素濃度(黄グラフ)が施用により上がっています。光合成速度の上り幅は1日で見ると大きくないのですが、その積み重ねで、月別で見ると差が生まれます。二酸化炭素施用のポイントですが、窓が閉まっていて日射が概ね100W/m2以上ある時間帯になります。窓が開いていると施用しても外に逃げてしまい無駄になり、日射がなければそもそも光合成が行われません。時間帯としては早朝と夕方になります。グラフ上「U」で示しています。温度(青グラフ)が25℃程度で日中安定していますが、これは窓の開閉で温度調節が行われている時間帯です。この時間帯は施用しても二酸化炭素は外に出てしまいますが、光合成量増加に効果がないわけではありません。局所施用など外に出さずに二酸化炭素が施用できるのであれば効果はあります。

 次に4~6月、10~11月の平均グラフを見てみます。


  基本的には1~3月と同じ考え方です。日中の温度が高くなる季節なので、窓が開いている時間帯が長くなります。日中、夕方の二酸化炭素を施用できる時間帯は短くなります。これらの季節は冬季よりも曇や雨の日が多いです。曇、雨の日でも日射が少しでもあれば二酸化炭素施用を積極的に行う必要があります。 

 最後に6~9月の夏季のグラフを見ます。


 夏季(7-9月)は25℃以上の時間帯が多く常に窓が開いています。前回記事で紹介した通り温度が高いと呼吸量が増えます。呼吸量が増えると純光合成量は下がります。そのため夏季は温度上昇をいかに抑えるかが重要です。遮光カーテンや遮熱シートを使って温度上昇を抑えることができますが、その分施設内に入る光量減ります。グラフを見ると、日射(オレンジ)とともに光合成量(緑)も上がりますが、あるところで光合成量は頭打ちになってしまいます。光合成量を見ながら遮光のタイミングを考える必要があります。ヒートポンプや細霧冷房、パッド&ファンなど施設内の冷却設備はありますが、どれも高価なので導入することが難しい農家さんも多いと思います。

 弊社の今年の夏季は特に苦戦したので、なるべく低コストで導入できる対策を考えていけたらと思います。 まとめると収量、光合成量を上げるには①積極的な二酸化炭素施用②夏季の高温対策がポイントになります。 

 今年の反省を生かして来年安定した出荷できればと思います。 


栽培担当 飯田

(株)静岡アグリビジネス研究所

農業をサイエンスに "Dトレイ栽培"で安定収入と週休2日を実現