病害虫対策は初期防除を重点に

 施設園芸の病害虫対策として農薬散布がひとつの手段として挙げられます。

 ここで気を付けなければならない点として薬剤抵抗性があります。 農薬散布で病害虫に薬剤抵抗性がついてしまった場合、薬剤抵抗性を持つ農薬とは別の作用機構をもつ農薬を散布する必要があります。これをローテーション散布と言います。 病害虫被害を出さないためにいろいろな農薬を散布すればいいというわけではありません。 ローテーション散布を繰り返して効果があればいいのですが、病害虫増加を抑えられなかった場合、強い薬剤抵抗性を持つ病害虫が残り負のスパイラルに陥ってしまいます。 

 

農薬の使用を減らすことはたくさんのメリットがあります。 やはり農薬の使用が少なければ消費者の方々には安心安全をお届けすることができます。 生産者にとっては農薬量の削減だけでなく、労働時間の短縮にもつながり費用削減の効果があります。


  弊社での農薬使用の取り組みとしては、初期防除を徹底し、生育初期に忌避剤と硫黄剤の組み合わせで定期的に散布しています。 忌避剤と硫黄剤は所謂化学農薬ではなく、食品添加物や有機農産物栽培に使用可能なものを使用しています。またこれに併せてコナジラミやスリップスの天敵昆虫であるタバコカスミカメを導入し、化学農薬の使用を極力抑えた防除に取り組んでおります。 この初期防除の取り組みを、データを使って比較したいと思います。

 まず忌避剤導入前後で各1回の作付け農薬の使用回数を比較します。 右端の忌避剤ですが、導入前は勿論0で、導入後1作4回程度の使用になっています。 左端の殺虫剤ですが、導入前後で7.7回から3.6回と半分に減らすことができました。 殺虫剤の使用回数が少なくても害虫がいない環境をつくることができれば、抵抗性をもつ害虫も減ります。なので害虫が発生しても比較的作用が弱い農薬で対策することができています。作用が強い農薬は勿論効果はあるのですが、強い抵抗性を生んでしまうこともリスクとしてあります。忌避剤と天敵昆虫の組み合わせで良い循環が生まれています。 中央の殺菌剤ですが、導入前後で6.3回から5.7回と少し減りました。ただ導入後のほとんどは初期防除で使用している硫黄剤になります。化学農薬の使用割合は大きく減らせていると考えています。



   次に1作当たりの平均薬散回数です。忌避剤導入前後で数値的には変わりませんでした。 ですが同じ1回でも散布量が変わればその分の費用、負担も変わります。 次のグラフでは、1作当たりの使用薬液量が導入前後で3割ほど減少していることを示しています。 直近22年では半分に減らすことができてました。 これらのデータから忌避剤、硫黄剤の初期防除+天敵昆虫の導入により農薬使用、量を大きく減らすことが出来ています。

  

 弊社現状としてこの1年は病害虫被害がほぼない状態をキープできました。データからも 現状の方法は効果があると言えます。また病害虫の発生が少なくなったため、以前ではあまり効果が見られなかった農薬でも効果が見られすぐに対策することが出来ています。これは農薬使用回数が減り病害虫の薬剤抵抗性が弱くなったからだと考えます。 病害虫対策ですが、発生してからではなく未然に防ぐことを念頭に置いて対策することが大切だと考えています。 なお、IPM(総合防除)の一環として温室内外の除草を徹底し、それらの雑草に病害虫を繁殖させないことも重要な病害虫対策となります。 


栽培担当 飯田    

(株)静岡アグリビジネス研究所

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